野田陣太郎「柔道故實 甲冑組打に就いて」

国会図書館デジタルコレクションの拡大で利用できる電子化資料が大幅に増えた。
昨日は柔道雑誌『有効乃活動』1920年3月号~6月号の4号にわたって扱心流(扱心一流柔術)の野田陣太郎による「柔道故實 甲冑組打に就いて」という記事をみつけた。戦場での組討の装備や故実、技法を紹介する記事だ。
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以下、面白い所を引用していく。

3月号より

戦場では人の眉毛は長くして置くものである。これ額や眉間を斬られた時に眉毛にて血を脇へ流し目に入らぬ爲である。
https://dl.ndl.go.jp/pid/2207686/1/16

「兩刀穿き様」と「馬手指さし様」



https://dl.ndl.go.jp/pid/2207686/1/18

刀の装備方法解説。
刀の寸法について、太刀については長いのは好ましくなく、二尺一二寸が良いとされている。打刀の一般的な長さ以下である。
特に馬上では長さを忌むという。また、短刀は一尺五~八寸位までが良いとされている。

4月号は甲冑での闘争の故実が中心で、その中に「槍劔柔三術評」という文章がある。
久留米の吉田重章が家中の良移心当流師範下坂五郎兵衛、関口流師範長澤小四郎に宛てた書簡で、槍術・剣術・柔術の三術について論じた文書だ。
https://dl.ndl.go.jp/pid/2207689/1/17

5月号は組討以外も含む戦場での心得を扱っている。
暗殺の技として、扇の親骨を除いて刃物を包み、畳んで刃物を隠しておいて使うということが秘事として紹介されている。


https://dl.ndl.go.jp/pid/2207688/1/26

6月号で本題とでも言うべき組討の話になる。
画像は組討で使う馬手指の作製法。寸法から刀装具まで細かく記述している。


https://dl.ndl.go.jp/pid/2207689/1/17

通常、馬手指は名前の通り右に差すが、隠し馬手指といって至極短い馬手指を篭手の裏につけて用いた例もあるとされている。

脇差の使い方として、4寸だけ抜いて斬る「四寸の勝身」の様々な用法が出ており、また一伝として4寸だけ抜いて切りつけると鞘が割れて斬ることができるという話についても紹介されている。


https://dl.ndl.go.jp/pid/2207689/1/19

以上のように組討に留まらず合戦・戦闘にまつわる様々な故実が紹介されている興味深い記事である。