石川賢版隆慶一郎クロスオーバー

 石川賢という漫画家がいる。有名人なので知っている人も多いが、その恐ろしさを知っている人は意外と少ない。その恐ろしさの一端は石川賢の打ち切り虚無戦記(現在は公開中止)で垣間見ることができる。すばらしい。
 その強烈な個性と原作つき作品での原作クラッシャーぶりゆえに、「石川賢版〜」というネタもいくつか考えられている。以下はその一部。順番に意味はない。


・ぶっ殺し帳面石川賢デスノート

・妄想企画 石川賢・画「妖星伝」

・「バベル熱風帖」石川賢HOTEL

・石川賢版『鋼の錬金術師』



 石川賢と言えば『虚無戦記』や、山田風太郎作品(『魔界転生』や『柳生十兵衛死す』)、国枝史郎神州纐纈城』の漫画化など、伝奇物をしばしば描いている。先ごろ連載が終わった『武蔵伝』も従来の石川賢作品とは趣向が違っていたが見事な伝奇作品だった。今後もオリジナル、または原作つきの伝奇物を手がける可能性は高いだろう。
 では、石川賢がこれから描く伝奇物と言えば何が良いだろうか。他の山田風太郎作品や話題の荒山徹作品を原作にするのもいいだろうが、個人的にここで推したいのは隆慶一郎作品の漫画化だ。それも単一の小説だけを原作にしたものではなく、隆慶一郎作品のクロスオーバーをやってほしい(クロスオーバーは石川賢版『柳生十兵衛死す』という前例もある)。
 まず何と言っても隆慶一郎作品は未完が多い。これはこの上なく石川賢とマッチするポイントだと言っていいだろう(そうか?)
 そして隆慶一郎の作品は安土桃山時代末期〜江戸時代初期を舞台にしたものがほとんどで、複数の作品で同じ人物やエピソードが何度も出てくる。実にクロスオーバー向きだ。
 ざっと思いついた内容はこんな感じ。


・ベースとなるのは『捨て童子松平忠輝』。石川賢は天性の気質で父親の思惑を超えているキャラが好きだし(それは『花と火の帝』の岩介も該当するのでは)。
・悪役は隆慶一郎作品でおなじみ徳川秀忠柳生宗矩。というかこの二人以外にありえない。
・しかしラスボスは織田信長
・空間を支配する戦い。異形化している柳生忍び。
ガトリングガンやミサイルで戦う松永誠一郎と庄司甚右衛門。反攻のため浮上する要塞基地・吉原。
「傀儡子の男たちは万能である。永年の放浪の間に様々な種類の職人と知り合い、その独特の術を教わり身につけているからだ」(『捨て童子松平忠輝』(中)より)
・向井兵庫の船は空中戦艦。
島左近前田慶次、斉藤杢之助といったいくさ人は宇宙でも戦える。死人だから。
・岩介ら『花と火の帝』の面々は「ドワォ」とか「バォォォ」とか光線を出す。
・最後は魔王として完全体になった信長に戦いを挑む。そして!!<完>


 想像するだけでも楽しい。実現してほしいものだ。