断片化した銃の知識は都市伝説となる

 銃の話に限ったことではないが、一般に広く知られる知識はかなり断片的でトリビア的というか、かなり雑なものになっていることが多い。間違っていることもしばしばある。そのため映画や小説といった創作での銃の知識がかなりおかしなことになっていることがある。『小林宏明のGUN講座』(エクスナレッジ)では、海外の小説における銃の用語や扱いのおかしな点が指摘されている。更にこうしたフィクションの知識はより大雑把な印象として一般人に浸透しているようだ。

 例えばこのゲームのプレイ動画だ。一番最初に手に入る銃はレバーアクション式のライフルで、22LRという低威力の弾を使う。しかし銃の形状や大きさしか判断材料にできない人は、なぜこの銃の威力が低いのか理解できない様子でコメントをつけている。レバーアクションの銃と言うと映画「ターミネーター2」あたりの印象が強いので、それ以外考えられないのだろう。
 その後手に入る銃に特に強力ではないリボルバー(38スペシャルを使う)があるが、「リボルバー=マグナム=強力な銃」という知識しか持たない人がいて、やはり先のライフルと同じような認識のズレを見せてくれる。
 

 ではマニアならそんな間違いは犯さないかというと、そうではない。所詮人間の知識や好奇心なんて多寡の知れたもので、どの分野にも相当数いる「ちょっとだけ詳しい」人間は断片的にしか知識を仕入れていない。一例を挙げると「アメリカの警察は最近ではリボルバーではなくオートマチックを使う」なんて話を書く人間が現在も存在する。1980年代なら「最近」で通用した知識だが、21世紀にこんな時代遅れの知識を披露しても意味はない。
 こうした断片化した知識で満足してしまう人は、知識の更新を行わないのだ。しかも厄介なことに最初に刷り込まれた知識を妄信し、この手の断片的な知識を「布教」しようとするのである。
 日本のトイガン雑誌の記事でもそうした傾向が一部にあり、毎号必ず「イメージ重視で慎重さを欠いたトリビア」が掲載される。「プロは45口径を使う」「Cz75は最高の銃」のような知識は、限定された条件の中では正しいかもしれないが、時代・地域・状況を越えて通用する普遍的な常識ではない。しかし分かりやすさ、話題性、メジャーな媒体での紹介が絡むとあっという間に普及し、「常識」扱いされてしまう。完全に間違った知識でも印象深いものは都市伝説のように広がる。日本ではあまりポピュラーではないがジャガイモが銃のサイレンサーになるというアメリカの都市伝説*1が一例だ。
 一部のマニアはこの手の都市伝説の拡がりを見て苦い思いをしたり、この手の都市伝説の後始末をしたりする。他の領域でも同様の都市伝説とその対処というのは起きているのだろうか。