2006〜2008年の鋼材の流行

 ショーで会っている人にはさんざん話した鋼材の流行の話。アメリカ中心。
・CPM S30Vは完全に定着している。ある程度高い質と価格の層にあるナイフファクトリーは、多くがS30Vのナイフを発売した。カスタムナイフメーカーも、特に実用を売りにしているメーカー(ハンティング、ユーティリティ、タクティカル等)はS30Vを中心にしている。しかし2007年にはこの状況に微妙に変化が訪れている。S30Vを製造しているクルッシブ社のCPM 154CMを使う例が微妙に増加したのだ。CPM 154CMは従来の154CMの粉末鋼版で、S30Vよりも低コストで切削しやすいとされている。CPM 154CMはS30Vとは異なり、よりクラシカルなナイフメーカーにも受け入れられている。例えば、ジェス・ホーンもトニー・ボースもCPM 154CMでナイフを作っている。また製品ラインナップの基本鋼材をS30VからCPM 154CMに完全に切り替えたメーカーもいるし、この鋼材をテスト的に用いているメーカーも何人もいる。
・ZDP-189のラミネート鋼材は、一部ファクトリーで使われているほか、カスタムナイフで使われる例も一部ある。フォルダー、小型シースとして狭い範囲で存在している。
・炭素鋼もクルッシブ社が強く、CPM 3VやCPM D2などの炭素鋼が人気だ。最もステンレスから古くからあるO-1や1095などの炭素鋼に回帰するカスタムメーカーもいる。
・ヨーロッパ、オーストラリアの動向は異なっており、だいぶ前からカスタムナイフ用としてはRWL-34の人気が高い。これはATS-34を粉末鋼にしてバナジウムを加えたような鋼材だ。