ニューヨーク市警の火器使用についての最新調査結果

 以前書いたニューヨーク市警の命中率から - 火薬と鋼と関連深い調査報告をいつも行っているフォーラムで教わった。
http://www.rand.org/pubs/monographs/MG717/
 アメリカのランド研究所が2007年からニューヨーク市警NYPDの銃火器の訓練の評価のために行った調査結果だ。リンク先の下のほうから全文ダウンロードできる。
 177ページもある報告書では、ニューヨーク市警の発砲、訓練、銃につけるアクセサリーや非致死性の装備(催涙ガス等)の状況が調査、分析されている。NYPD以外の警察の実情も参照されており、アメリカの警察の事情を知りたいならば全部読むことをお勧めする。
 ちょっと量が多いのでざっと目についた部分だけ紹介する。


 まず前提。
 NYPDの警官は、銃器の使用は最後の手段(last resort)と教わっている。
 米国司法省の2005年の調査では、アメリカの警官が容疑者に実力行使する、または示威を行う率は1.5%である。
 NYPDでも同じ傾向を示し、容疑者に銃を向けた率は0.5%である。


 命中率について。
・警察官の発砲による命中率は低く(これは全国的なものである)、銃撃戦(相手も発砲してくる場合)の命中率は更にさがる。
 1998年から2006年にかけて、銃撃戦での命中率は18%、銃撃戦でない場合の命中率は30%だった。
・銃撃戦のほうが発砲数は増える。銃撃戦における警官の発砲数は平均7.6発で、銃撃戦でない場合の発砲数は平均3.5発である。
・命中率は近距離で向上する。7ヤード(6.4m)未満での命中率は37%だが、それ以上の距離では23%に落ち込む。


 その他
・銃に装備するフラッシュライトとレーザーは重要。レーザーは命中率を上昇させ、被害を減らす。
 警官の発砲は低光量の状況で起きることが多く、片手が使えなくなる手持ちのライトより銃に装着するライトが有用である。
・NYPDでは催涙ガスの装備はあるがCED(Conducted-Energy Device。Taserが代表的)は特殊部隊や特に個人購入した警官にしか使われていない。
 CEDには高い評価と実績があり、発砲による死傷者を減らすためにCEDの装備を推奨する。