アニメ・漫画でこれだけは見過ごせない銃の間違い 指・手編

2009年最初のネタは大晦日に言及したアニメ・漫画の銃の間違いについて。
フィクションの中の銃の間違いと言うと掃いて捨てるほどネタが多く、食傷している人も多いのではないかと思う。
そこで、ここでは間違いの中でも言及されることが少ないが重要な部分を取り上げる。もちろん間違いがつまらなさにつながっているという訳ではないが、リアリティのある描写を売りにしていて間違いがあると、改善してほしいと思うことはある。


さて、皆さんはアニメや漫画で銃が出てくると、どこに注目するだろうか。
銃の輪郭、ディティールを見るのは当然として、多少のマニアともなれば銃の作動や操作を見るようになる。
そして今回取り上げる「指・手」の問題は操作の問題だ。
アニメや漫画に出てくる銃を見て、その名前を判別できる人は多いが、その操作の際、指や手はどのようにその銃に接しているかを知っている人は少ない。
恐らく銃というものを銃単体でしか注目していない人が多いせいだろう。野球やゴルフのようなスポーツものであれば、人がどのように道具を扱うかはかなり重要な位置を占める。ところが銃を扱う作品では必ずしもそうではなくなるのだ。

トリガーフィンガー

銃を持った人間がトリガー=引き金を引くシーンを想像してほしい。
さて、ここで問題。引き金にはどの程度指がかかっているだろう。
正解はこちら。

指の末節の部分で引くのが正しい。
この時、トリガーにかかるのは関節部分ではなく指の腹と呼ばれる部分である。関節で引くとトリガーの感触が正確に伝わってこない。この事は銃を扱う基礎知識だが、アニメ、漫画、あるいはCGの絵師には知られていない。極端な場合、以下のようになっているものがある。

指の中節がトリガーにかかっている。
これは、よほど変な握り方をするか指が長いかでないと不可能だし、もちろん間違っている。こうした例は昨年アニメ化された屍姫のポスター(一巻表紙絵)でも見られた。
屍姫公式サイト【単行本情報】
私は書店に行くたびにあのありえない指のかけ方が気になった。こうした例は多くの作品で見られる。話題になることもまずない。だが、銃が出ているアニメ、漫画、絵は手・指に注目することで、製作者の観察力の程度をはかることができるのだ。こうした間違いは、銃の知識以前に手の大きさから考えて無理があるからだ。

グリップ

トリガーフィンガーの問題と絡んで、銃の握り方がおかしいという絵もよくある。
銃を握る場合(特に片手で持つ場合)、銃の中心を通る線と前腕の中心を通る線が一直線になるように持つ。

こうしなければ銃の反動を正確に腕に伝えることができず、反動で銃がぶれてしまう。しかし以下のように銃の中心線と前腕の中心線が合っていないことも創作では見られる。

なお、銃を握る際はなるべく上のほうを握る(これも反動を制御するため)のも基本技術だが、下のほうを握っている創作物がある。


上述の指の間違った指のかけ方にしてもそうだが、銃の基本操作を図・写真つきで基礎から紹介している資料が極めて少ないことがこうした間違いの普及を助長しているのではないだろうか。
銃の外見、歴史、用語、評価についての日本語資料はあっても、操作の際に人体と銃がどのような位置関係にあるのが正しいのか解説している資料は洋書か映像が中心になっている。
このため、銃の大きさと人間の大きさの比率がおかしくない絵でも、手とトリガー、グリップの関係にまで気が回っていないものが多い。
手が大きくなければトリガーやセイフティ等に指をかけにくい銃というのも存在するのだが、そうした銃を手の小さなキャラクターが問題なく使っているというのがよく見られる。ガンスリンガーガールなどはこの典型と言えるだろう。
筋力の問題ではなく物理的に届かない指で銃をどう操作するというのだ?


こうした操作に対する知識、観察力の問題は立ち方(スタンス)や両手持ち、姿勢、視点といった要素を加えると更に複雑になって画面に影響を与える。
実際には操作や位置関係の意味を完璧に理解する必要はなく、実銃を扱う写真や動画をよく観察すればいいだけのことなのだが、そんな事をしている製作者は多くないということだろう。