アニメ・漫画でこれだけは見過ごせない銃の間違い 待機編

思うに、漫画やアニメ絵の描き方についての本でも銃の操作については触れていないものばかりで、しかも先人たちの作品にも間違いが多いことも誤りが広がる一因だろう。
ブックマークコメントにもあったが、刀剣や楽器の形状・操作もひどいものが多い。
こうした要素は、作品の面白さに直結しているわけではないが、そうしたディティールを詰める方向性の作品ではシビアに見られるべきだと思う(逆にガンマニアでも映画「リベリオン」や「エスケープ・フロム・LA」の銃の扱いに文句を言ったりはしない)。
「料理の技法がおかしい料理漫画」(ビッグ錠なら良い)とか「クラブの持ち方が変なゴルフ漫画」(石川賢なら良い)とか、そういった認識と同じようなものだと思ってほしい。作品や設定次第でどの程度のリアリティが必要となるかは変わる。
 

前回のアニメ・漫画でこれだけは見過ごせない銃の間違い 指・手編 - 火薬と鋼に続いて、銃を持った状態で準備・待機姿勢について紹介する。
なぜその説明をするかというと、アニメ・漫画で銃がよく見えるシーンというのは、実は銃撃戦のシーンではなくその前、銃を持って銃撃に備える状態のシーンだからだ。

指をかけるな

まず、これも基本中の基本。銃を撃たない時はトリガーに指をかけない。
そもそもトリガーガードの輪の中に指を入れないことが原則になっている。
どうするかというと、下の画像のように指を伸ばす。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Gun_safety.jpg
指をトリガーにかけていいのは、銃口を標的に向ける時だけである。
なぜトリガーから指を離すかというと、誤射の可能性を減らすためだ。
トリガーに指がかかっていれば銃を誤射する可能性はかなり増大する(そういう事故は多い)。

マズルを向けるな

そしてマズル(銃口)は下方に向ける(ななめ45度下方に向ける待機姿勢をTraditional Low Readyという)。
銃口をやや下方に向けるのは、誤射の際の被害を減らすためだ。銃口を顔近くや仲間のほうに向けるのはバカのすることで、誤射の際に弾が当たらなくとも銃声やブラスト、マズルフラッシュで被害を受ける。


こうした考えの基礎として、基本的に銃はいつでも弾が出るものとして扱うという認識を持たなければならない。例えマガジンが入っていない状態でも、弾が出るものとして注意する。
映画のポスターや漫画の絵でよく顔の近くに銃を持っているのは、単に見栄えを重視しているだけのことで、実際にはやるべきことではない。
また、こうした準備・待機状態の銃の保持方法(gun-ready positionという)もいくつかの方法があり、より安全で迅速に対応できるスタイルが日々模索されている。例えば近年知られているものとしてはポジションSULと呼ばれるスタイルがある。
Situational Handgun Ready Positions: Another Perspective | S.W.A.T. Magazine(SULを含む各ポジションの解説記事)
これは警察や法的機関で銃口を仲間や一般市民に向けないためのポジションの一つである。
準備・待機の姿勢は、自分や味方、周囲の人間を守るためにあるということがよく分かる例だ。


こうした誤射に対応した注意事項は、第二次世界大戦後に定着したもので、後の時代になるほど重視されていった。
だから逆に言えば古い時代を舞台とした物語でこの原則が忠実に守られていれば、それはそれでおかしなことになる。
また、現代でもこの原則を守らない人間はいる。現代であれば訓練を受けていないこと、あるいは油断を示すことになる(もちろん現実では状況によって兵士でもこの原則が守れないことはある)。
ともかく銃を持つと関係ないものや自分さえ撃ちかねないということは、知っておくべきことだ。