知られざる大学図書館と大学研究室資料の関係

 図書館と研究室所蔵資料の微妙なお話 - Togetter
 Twitterでこんなやり取りがあったそうな。
 この手の件については、過去の経験で色々と知っているので簡単に書いてみよう。

大学の研究室の本はどう買うの?

 大学には大体先生個人の、あるいは専攻の研究室があり、先生や院生等がそこを根城にしている。
 研究に使う資料類もそこにあり、多くは大学が出している研究費から購入される。
 しかしどういうルートで買い、どのように会計に書類を出すかは大学によってパターンが分かれる。
 一つは研究室の人間(普通は教員)が書店や出版社から買い、請求書や書類を経理に回すもの。
 もう一つは図書館を経由するものだ。
 予算によってこうした手続きが混在していることもある。
 案外知られていないが、大学で購入する本は、例え図書館に置くものでなくとも大学図書館が管理していることが多い。
 これは、図書館が書籍雑誌の管理に適したシステムを持っており、図書館独自の割引が有効であるといった事情もあり、歴史的・制度的にそうなったものである。
 かなり多くの大学で、研究室用の資料は図書館経由で購入手続きがなされている。
 最も、こうした大学でも近年は先生自身が買ってきた本をそのまま図書館に持参し、図書館システムへの登録や原簿記入といった処理だけ図書館が行うという例も増えたようだ。
 これは多くはアマゾンのせいであるといって良いだろう。
 図書館経由で受けられる書店の割引サービスなんて、洋書などでは全くメリットがないのである。

研究室の本を利用できるか

 図書館を経由して研究室図書を購入している大学も、その後の利用となるとまたいくつかのパターンに分かれる。
 一つは図書館システムに登録し、そのデータをOPACで公開しているところ。
 こうした図書館では、利用者の要望に応じて研究室の教員に確認して閲覧や貸出を行うところもある。
 この場合、教員に確認して研究室から取寄せるので即座に利用できないし、教員の事情で利用できないこともありえる。
 その他、図書館システムに登録はしてもOPACで公開せず、あくまで記録の管理だけ行うところもある。


 研究室の図書も教員が購入している物品と同じで備品と消耗品がある。
 備品は資産であり、管理が厳しい。
 このため備品の図書だけ図書館システムに登録し、消耗品は登録しないという大学が多い。
 教員による管理に任せる、消耗品扱いでしか買わないといった方法で大学が管理していないこともある。
 大学図書館OPACだけでは、例え研究室図書を公開している大学でも全貌は分からない。
 詰まるところ、研究室の本を利用者が検索できるか・利用できるかは大学の経理会計や管理体系と密接に関係しており、図書館単独では利用方法を作ることはできない。
 研究室図書を利用するすべのない図書館では、教員が研究室用に購入した本を図書館の選書リストに加えることで専門性の高い蔵書構築に役立てる例もある。

研究室図書の行く末

 研究室の図書は、教員が大学からいなくなる際に処分される。
 この処分方法も大学によって違う。
 図書館システムに研究室図書を登録、公開しているような大学では、おおむね大学への返還手続きがある。
 逆に、図書館を介していなかったり、全て消耗品扱いで管理が厳格ではない大学では、扱いはまちまちだ。
 大学に返還・寄贈されることもあれば、そのまま先生に引き取られたり捨てられたりするところもある。
 私が見たひどい例では、辞めた教員の研究室図書が研究室にそのまま残って(新任の教員が研究室に入っても)放置されていた大学がある。
 研究室図書の返還・返却手続きがしっかりとある大学でも、教員は一部の本を紛失していることが多く、図書館が管理している記録通りに揃わないことが多い。
 また、記録にない本が混入していることもある。
 このため研究室図書の引き揚げがあると図書館は本の移動、確認作業や登録作業に追われ、結構大変なことになる。