表現規制と未成年へのポルノ販売の事件

 http://h.hatena.ne.jp/y_arim/9234093955154139520について

machida77 この件で思い出した。未成年にポルノを売った人の判例が図書館の自由関係の本で紹介されていたはずなんだけど、出所が思い出せない。探しておこう。 2010/03/23

とブックマークコメントをつけた件がようやく確認できた。
 元のハイクと論点がずれるのだが、性的表現をどのように国が許容するかという問題には関係すると思う。


 問題の事件は「ギンズバーグ対ニューヨーク事件」(Ginsberg v. New York)。
 川崎良孝『図書館の自由とは何か アメリカの事例と実践』(1996, 教育資料出版会)で僅かに言及されている。
 ギンズバーグ事件は、教育委員会学校図書館の本を検閲できるかどうかの事例の一つ、プレジデンツ事件の裁判で示された。

 ギンズバーグは16歳の少年にヌード雑誌を販売し、有罪となった。しかしギンズバーグは、合衆国憲法が保障する表現の自由の範囲は成人と青少年で異なってはならないと主張した。合衆国最高裁は、俎上にのぼっている青少年の保護育成を目的とするニューヨーク州法は、憲法上保護された青少年の権利を侵害していないと判示した。



 という事件。
Ginsberg v. New York :: 390 U.S. 629 (1968) :: Justia US Supreme Court Centerで詳細を確認できる。
 これは、州法で猥褻とされた表現に未成年者はアクセスできないという判例である。
 ここから、未成年者は州法で猥褻とされない全ての情報にアクセスする権利を持つという図書館側の主張の根拠として使われた。
 実際にはもうちょっと込み入ったものなので、元のギンズバーグ事件についてもっと詳しく説明しよう。
 以下、アメリカ図書館協会http://www.ala.org/ala/aboutala/offices/oif/ifissues/issuesrelatedlinks/minorsrights.cfmの説明に従って書く。



 ギンズバーグ事件は、未成年者が情報にアクセスする権利について、あるいはポルノ問題でよく扱われる。
 例えば通信品位法の違憲判決の際にも示された(InfoCom NL-ƒgƒŒƒ“ƒhî•ñ-ƒVƒŠ[ƒYiInfoCom Law Reportj
 過去、合衆国最高裁は2つの事件から2つの場合において、未成年者の情報を受け取る権利を制限した。
 一つは、学校図書館において「教育的不適正」「明らかに下卑」という場合(ピコ事件)*1
 もう一つは成人にとっては憲法の保護下にあるが、州が未成年者にとって猥褻とみなす場合(ギンズバーグ事件)。
 ギンズバーグ事件で未成年者にヌード雑誌を売った業者は有罪となった。
 最高裁の説明によると、当該雑誌は明らかに成人にとって猥褻ではないが、ニューヨーク州は未成年者に対して猥褻の広範で明確な定義を採用するに際し、修正第一条の範囲内に収めているという。
 この判決に従うと、成人にとって猥褻ではない資料も、未成年にとっては猥褻である=情報にアクセスする権利を制限できるということになる。
 ただし、この判決に限界があることを裁判所は認識している。
 第1に、裸体といった言論全体の中の下位カテゴリーだけが猥褻とみなされる場合、未成年者を全体的カテゴリーに単にさらすことを禁じることはできない。
 第2に、州は未成年者全体(低年齢から最も高い年齢まで)との関わりの中で猥褻であるかどうかを決定しなければならない。
 要するに、年長の未成年者に適した資料を禁じてはならない。
 なお、過去の日本の有害コミック問題について日本の図書館界が否定的なのは、自治体が猥褻を認定していることに反対しているのではなく、認定方法が曖昧で過度に広範囲なものを含めているからである。

*1:ただし、思想に依拠して除去した場合には違憲となる