ロシア軍特殊部隊用ナイフ "カラテル"

前から探していたスペツナズ用のナイフをようやく入手できたので紹介したい。

このナイフはロシアのMelita-K. Knives (Мелита-К)の"カラテル (Каратель)"というナイフだ。
Melita-K. Knives for life Melita-Kの公式サイト
GRUを含め、ロシア軍の特殊部隊で使われてるとされている。
"カラテル"は英語にすれば"パニッシャー"だが、日本語にはいい訳語がない。


私がこのナイフを知ったのは、まだ2chの軍用ナイフスレに書き込んでいた頃だ。各国のコンバットナイフの画像を探し、軍事画像フォーラムのMilitaryphotos.netで見たのが初見である。しかしロシアのナイフについては英語圏では販売ルートはおろか、情報すらろくになかった。その後ちゃんとした情報を得て実物を買うまで何年もかかってしまった。

一応説明書らしき紙がついてきた。実物と説明書を見て愕然としたのは、同社のWebカタログに載っているサイズの数値と実物・説明書の数値が違っていたことだ。カタログでは全長280mmだが、実測値は270mm、説明書では272mmなのである*1

シースは皮製。あまり柔軟性がない。

ベルトループはかなり上下幅が広い。

シースの一番下は縫われていない。水が溜まらないようにしているのだろうか(単なる省力化の可能性あり)。

改めて全体像。
このナイフにはいくつかのバリエーションがある。
公式によるとセレーション(波刃)がないもの、セレーションが後ろにあるもの、セレーションが前にあるものの3種類がある*2
その他にハンドルの種類(レザーワッシャー、ラバー(フィンガーチャンネルあり)、ラバー(フィンガーチャンネルなし)やブレードの仕上げ(マット仕上げ、カモフラージュ、ブラック)の違いといったバリエーションの写真を確認している。

ステンレス製のハンドルエンド。バットキャップを固定するネジやピンは見えない。紐を通すソングホールは、側面ではなく上下に穴が開いている。

ハンドガード前方。こちらにも穴が開けられている。

ハンドガード後方とブレードバック。
ハンドガードには滑り止めの溝がいくつも刻まれているが、鋭い加工ではない。
ブレードバックのくぼんだ部分は指かけとして使えるほか、ここに敵の体(手首など)をかけ、コントロールすることができる。

セイバーグリップで握るとこんな感じ。ハンドルは厚みがあり、最大22mmほどある。

Melita-Kのコウモリのマークがエッチングされている。反対側にはシリアルナンバーがエッチングされている。

ブレードには片側だけКАРАТЕЛЬ(カラテル)の文字がエッチングされている。

逆手で持つとこんな感じ。
ロシアでは90年代から2000年初頭にかけて、複数の企業がソ連時代と違う新しいデザインのナイフを軍に納入するようになった。他国のナイフの真似もあれば、独自のデザインもある。Melita-Kのナイフはその中でも独自色が強く、カラテルも他国のコンバットナイフやタクティカルナイフには見られないスタイルだ。
カラテルの最大の特徴は、切るためのデザインと突くためのデザインを両立させた特異なブレードラインにある。リカーブド・スタイルで幅広のブレードは切るためのデザインであり、ブレードの6割を両刃にしたのは突くためのデザインだ。幅が広いブレードは地雷などを掘る作業にも使え、ブレードバックのくぼみは軽量化とバランスに貢献するとともに作業や戦闘時に多様な使い方を可能としている。
このカラテルは、特殊部隊用のナイフとしては比較的知られているほうで、オンラインFPS「Warface」の装備として登場している。
(追記)ロシア軍特殊部隊用ナイフ "カラテル"とダガー規制 - 火薬と鋼

*1:ロシア語の本では全長297mmだった。違いすぎる。

*2:セレーション付モデルは全てハーフセレーション。鋼材は全て70Cr16MoVaSiというステンレスとされている。ハンドガード、バットキャップの鋼材は50Cr14MoVaというステンレス。