兵士としての武士を知る『戦国時代 武器・防具・戦術百科』

図説 戦国時代 武器・防具・戦術百科

図説 戦国時代 武器・防具・戦術百科


Weapons and Fighting Techniques of the Samurai Warrior, 1200-1900の日本語版。著者本人による日本語版であり、監修に小和田哲男氏がついていることもあって、訳書にありがちなおかしさを感じない本。
この本は、タイトルに「戦国時代」とついているが実際には中世から近代直前までの幅広い年代の武士の合戦にまつわる情報を整理した本である。特に鎌倉・室町・戦国までの時代についてが中心で、その合戦の背景も含めて解説されている。
その内容は単なる合戦、武具や戦術に留まらず、武術的な知識に関わる話もある。また、図や写真が豊富で、当時の絵図や浮世絵、解説図などカラーの図版も多い。
武士のあり方や精神性、武術といったものから始まり、単なるハンドブックに留まらない様々な視点からの解説、情報を含んでいる。特に騎兵や銃器、大砲の運用についての解説は、日本の類書でもあまり触れられていない要素を含んでいる。
新しい知見がある一方で、この本に書かれた戦術の変遷や解説には疑問があるというか、肯定しかねる部分もある。豊富な図版にはなぜこの図を採用したのか分からないものもある。この本に全面的に依存するには難があるが、武士の戦闘について幅広く知りたいなら一度は読んでおくべき本だと言える。