太田記念美術館「深掘り!浮世絵の見方」

展覧会 | 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art

これは浮世絵に興味がある人には必見の展覧会と言っていいだろう。
絵師による波・雨の表現の違い、摺りを重ねることによる様々な変化、作業工程や版元印など鑑賞のポイントや製造販売にも関わる情報がわかりやすく展示されている。
検閲対策で校合絵の後で顔を役者の顔に改めたり、下絵の段階で漫画のように切り貼りで修正したりといった、通常分からない作業工程上の展示もある。
髪の毛や文字など微細な描写の展示もあり、その中の国貞「江戸自慢 五百羅漢施餓鬼」の蚊帳の表現にも驚いた。
この展覧会の中での最も面白かったのは、摺りを重ねていくとだんだん版木の摩耗で線が太くなり、また彩色が簡略化されたり手直しされたりするという摺りの変化の展示だ。浮世絵の表現とは絵師単独で成り立っているものではなく、一連の工程の中で生まれるものだということを強く認識させる展覧会だった。