昨日の秋葉原通り魔事件とナイフ規制の続き。
これは報道のせいもあると思うんだが、当初犯人が持っていたのはサバイバルナイフとされてこれが攻撃の対象になった。
サバイバルナイフの規制強化検討 「本当に忌まわしい凶行」と官房長官(MSN産経ニュース)
本当にサバイバルナイフか?という疑問はあったし、何より「サバイバルナイフ」という定義は厄介なので規制されるとしたらどういう基準での規制になるかなーという点が気になっていた。
で、その後持っていたナイフがダガーだという話になってダガーが攻撃されている。
【秋葉原通り魔事件】凶器のダガーナイフ 高い殺傷力(MSN産経ニュース)
今読んだ読売の夕刊一面もこんな感じの記事だった。
記事のポイントは
(1)ダガーは高い殺傷力を持つ
(2)ダガーはほとんど規制されていない
(3)犯人がダガーを買ったのはゲームに登場していたからではないか
この3点だ。
いや、規制はあるんだけどね。15cm以上だと剣扱いになるので所持できないし販売もされていない*1。セレーション(波刃・鋸刃)が入っていると15cm以上でも所持できるけど。本当に店の人間は「販売規制はないに等しい」と言っていたのかどうかすら疑いたくなる。
殺傷力云々もなー。この議論を詰めても意味がないのは昨日書いたが、「規制範囲内のダガーより柳刃包丁のほうが殺傷力高いよ」とは言いたくはなるわな。こういう記事を書かれると。法医学者の上野正彦氏が書いた本では、柳刃包丁が女性と女性がかばった子どもを同時に貫いた痛ましい事件が紹介されているが*2、規制内のダガーでそんな真似はまずできないし。ただし昨日書いた社会にとっての必要性の議論にずれこむのでどのみち殺傷力を論じても規制避けの主張にはならない。世間もマスコミも気兼ねなく排斥できる攻撃対象を求めているのだ。仮にダガーが規制され、日本で販売されていなかったらここまでの惨事にならなかった、とでも言うように*3。どんだけおめでたい頭なんだ。
そしてゲームに登場したってくだりはかなり誇張が入っている。ドラクエでダガーが出たからダガーを買った人間なんていないだろう。そんなにダガーが印象に残ってる人間はいない。読売の夕刊の書き方はもっとひどくて「人気ゲームで主人公が使う武器として登場するなど、若者の人気アイテム」なんて書いてある。それは一体どこの世界の話だ?「スイーツ(笑)」ならぬ「ダガー(笑)」の世界が現代日本にはあるのだろうか。これはオタク叩きというかゲーム叩きの一環だな。
過去にもしばしば見られたことだが、この辺マスコミは無理やり連動させて関連性や因果関係があるかのように騒ぐ。当面、秋葉原もオタクもアニメもゲームもナイフ(ダガー)も全て犯罪につながるものとして一緒くたに書かれることだろう。新聞の騒ぎようを見ていると、世間ではオタクならダガーを持っていると思うようになるかもね。
それにしてもナイフに言及しているブロガーが激増していて色々と興味深い。
(追記)
id:REVさんのところにナイフっぽい話の題でランドールのM2がレターオープナーとして売られていると書かれているが、「刃のついていない」なんて事実に反する誤解されそうなことを書くのは止めてほしい*4。あと5インチブレードのM2はもともとアメリカでもletter opener and boot knifeの名前だ。もちろん店の説明文や"boot knife"を省いているあたりは配慮というヤツだが、もともとletter openerの名前で売ってることを忘れてはいけない。ナイフの名前というのはシャレや比喩でついていることもあるのだ(有名なArkansas ToothpickとかTOPSのScalpelとかね)。
(再追記)
上の追記で書いた部分は修正されました。何かすみません。
で、補足しとくと刃物店は、銃刀法の規制に収まるサイズのダガーの販売には本来名前の配慮とか用途のこじつけなんか全くしていない。ランドールの例はもともとの英語の名前に引っ掛けた特殊な例だと言える。
続々・秋葉原通り魔事件とナイフ規制〜恐怖と憎悪が規制を生む〜に続く