フィクションにおけるナイフ格闘のリアリティとリアルおまけ 映画の優れたナイフ格闘シーン紹介

ナイフ格闘の優れた描写があるフィクションというと、何より映画である。
実際にナイフ格闘のインストラクターが指導していることも多々あって、現実の技術をうまく取り込んでいる映画が何本かある。ここではそうしたナイフ格闘の優れた場面を動画とともに紹介し、簡単に解説してみる。
映画のネタバレ、流血を含むので注意。

『殺しのアーティスト』(1991年アメリカ)

ナイフとナイフ格闘を中心に据えた珍しいサスペンス。
 
主人公のトレーニングシーン。ナイフの攻撃部位をおおまかに分割したエリアで示しているのだが、その攻撃の刺突・斬撃の形は現実の技術そのもの。動画終盤にあるナイフの捌き方・トラッピングの技術もうまく表現している。ナイフ格闘の訓練では互いの攻撃を抑え、あるいは捌いての攻防を身につける練習をするのだが、それを再現した数少ない映画である。この動画以外にもナイフ格闘での見所がいくつもあるので必見。

ハンテッド』(2003年アメリカ)

この映画はトラッキングという追跡技術を素材にしているのだが、ナイフ格闘も重要な要素を占めている。この映画のナイフ格闘はサヨック・カリというフィリピン武術で、軍向けの技術も教えているトレーニンググループの技術だ。

回想シーンに出てくるナイフ格闘訓練風景。トラッピングのような攻防のやりとりではなく、特定の体勢に対する攻撃手順の訓練である。特にライフルのスリングを利用した相手のコントロールなど、民間では教えられていない軍隊向けの技術が出ている。

クライマックスの戦闘。この映画に関するインタビューによると、映画としての演出からリアルなナイフ戦闘よりも時間をかけた戦闘にわざとしているという。不利な状態や膠着状態に陥りそうになると持ち手以外の手足も使って状況を打破している点に注意。

暴走特急』(1995年アメリカ)

ティーブン・セガールの映画でナイフ格闘が描かれた代表と言えば『沈黙の戦艦』とその続編『暴走特急』である。『沈黙の戦艦』のナイフ格闘シーンはかなりの部分をカットでごまかしており、『暴走特急』のほうが見所がある。

ナイフを使うのは1:06から。このシーンのポイントは、ナイフそのものの用法よりも対ナイフ格闘技術として、相手の攻撃を流すことで体勢を崩すというアクションを演出して見せていることだ。

ボーン・アルティメイタム』(2007年アメリカ)

これはナイフ格闘ではないのでちょっと例外。
ただし、元となった技術や演出は参考になるだろう。
『ボーン』シリーズはフィリピン武術のカリ風のアクションの演出を行っている。アクション指導のジェフ・イマダはアメリカで初めてバタフライナイフ(バリソンナイフ)の扱いに関する本を出した人物である。
ここでは主人公ボーンと暗殺者デッシュの対決シーンのメイキング動画を紹介する。

攻撃のトラッピング、手近にあるものを使った武器術の使用など、ナイフ格闘に通じる技術がふんだんに使われている。


他にも優れたナイフ格闘シーンのある映画はいくつかあるが、手頃な動画がないので以上の例に留めておく。それぞれの動作の意味(実用上/演出上の)や武器の持ち手以外の動作に目を配ると面白い発見があるだろう。


(2014-04-20)
追加を書いた>>続・映画の優れたナイフ格闘シーン紹介 - 火薬と鋼