太極拳のCGモデル教材の研究についてのメモ

CiNii 論文 -  太極拳独習用CG教材の開発と評価(ポスター展示(エンターテインメント・アニメーション),映像表現フォーラム)の内容について確認したのでまとめておく。


・この研究は、太極拳の師範の動きを3DCGでデータ化した教材を作成し、普通のビデオの教材と練習者の学習しやすさを比較するというもの。
・先行研究として伝統舞踊のCG教材の有効性の研究が挙げられている。→伝統舞踊のデジタル化
太極拳の撮影は、赤外線方式のRaptor-4を12台使用し、モーションキャプチャーのマーカーは37箇所。取得にはMAC3Dを使った。
・Motionbuilderを使い、モーションデータをMayaで作成した3Dのモデルと対応させた。こうして作成したモーションデータには問題点があり、学習者に誤解を生じさせる可能性があるため師範の監修により修正した。
・この3DCGのデータを教材として編集。具体的には利用者が見たい角度から見えるようにカメラを設定(前後左右・斜め45度の8箇所)。また、練習で鏡を使うことが多いことから鏡を配置したステージを設定した。
・CG教材ではアングルの変更、鏡の有無が選択できるように実行画面にボタンを設定した。
・教材を使用した結果はAbstractにある通り。ただし被験者は8人、学習時間は30分である。被験者からの教材の採点以外に、被験者の演武について師範が採点している。後者では有意性は検出されなかった。
・今後の研究の可能性としてリアルタイムレンダリングを利用した視線・視点に関するインタラクティブ性の向上が考えられている。また、画面を見ながらの稽古が難しいため、ヘッドマウントディスプレイの活用にも言及されている。


感想。
・この研究で興味深かった点の一つは、モーションキャプチャーでモデル化したデータについて、実際の演武を行った師範の監修が必要だったという点。どういった問題があったのか、それをどのように解決したのかはこの研究では具体的に触れられていない。
・一般にこの種の教材は音声による解説がつくもので、その点も本来なら検討していく必要があるのではないだろうか(研究テーマとしては難しいが)。もし本当に教材として利用していくことを考えると、CG教材にあわせた音声ガイドを考えることが必要になる。
・被験者の演武を師範が採点するという方式について。師範はCG教材を使った被験者と普通のビデオ教材を使った被験者の違いについて言及しているが、どの被験者がどの教材で学んだか、採点時に師範が知っていたのだろうかという事が気になった。