漫画の中のロシア武術システマ 第4回『ツマヌダ格闘街』『嘘喰い』

前回でシステマについて詳しく扱った漫画は全て紹介し終わった。
今回は僅かなシーンだけ登場している漫画を紹介しよう。
第4回は『ツマヌダ格闘街』(上山道郎少年画報社)と『嘘喰い』(迫稔雄集英社)について書いてみる。


ツマヌダ格闘街 10 (ヤングキングコミックス)

ツマヌダ格闘街 10 (ヤングキングコミックス)

嘘喰い 27 (ヤングジャンプコミックス)

嘘喰い 27 (ヤングジャンプコミックス)

ツマヌダ格闘街』とシステマ

ツマヌダ格闘街(ファイトタウン)』は『ヤングキング』で2006年21号から連載が始まり、『ヤングキングアワーズ』、『月刊ヤングキング』、『月刊ヤングキングアワーズGH』と移籍して現在も連載が続いている漫画だ。
主人公の八重樫ミツルは格闘技初心者だが、謎めいたメイド、ドラエ・タチバナ=ドリャーエフの指導を受けてストリートファイトが地域振興策として制度化された街で戦っていくことになる。
登場する流派や人物はほぼ架空だが、現実の武術の身体操作法や技術の知識に基づいた解説・描写となっている。


ステマが登場するのは、衛府流という空手を使う鷹羽和義と軍隊格闘術を使うカイン・ブルツ・トゥーラッドの2人のストリートファイターの試合。10巻の「Fight59:ノーブリス・オブリージ」である。システマが登場するコマのみ抜き出した。


上山道郎(2011)『ツマヌダ格闘街』10巻(少年画報社)より

ここでカインが行う呼吸法による回復としてシステマの技術が登場する。この呼吸法の描写とその解説から、これはシステマのバースト・ブリージングのことと思われる。
カインは軍隊格闘技を使うが、システマ使いというわけではない。システマについてはこの場面が初登場となる。このためかなり簡単なものだがシステマそのものの説明もある。システマの呼吸法に言及した漫画は『ディアスポリス』『TOUGH』という例があるが、実際に使用する描写があるのは現在までのところ『ツマヌダ格闘街』だけである。


(2013-10-13追加)
その後もシステマが登場する場面があったので追加記事を書いた。
漫画の中のロシア武術システマ 補遺 『ツマヌダ格闘街』追加 - 火薬と鋼

嘘喰い』とシステマ

嘘喰い』は『週刊ヤングジャンプ』で2005年48号から連載が始まり、現在も連載が続いている漫画だ。「嘘喰い」と呼ばれる天才的なギャンブラー斑目貘と彼とたまたま出会った青年・梶隆臣の二人が、生死までも賭けるギャンブルの世界で勝負を繰り広げる話である。
国家権力にまで影響を持つ裏のギャンブル組織「賭郎」が取り仕切る勝負が基本で、登場するギャンブルはオリジナリティが強く、また生命や勝負の勝ちを守るための暴力が重要な役割を果たす。


ステマが登場するのは単行本27巻「第294話 再出発」。密輸船ジャルード号で行われている賭郎勝負の裏で戦うキャラクターの場面である。




迫稔雄(2012)『嘘喰い』27巻(集英社)より

肝心のシステマ描写は、変わった動きを見せているこの場面。現実のシステマとはまたも違う例と言っていいだろう。この後、この戦いはシステマの戦い方とは関わりのない局面に変わるので、システマが出てくるのは実質ここだけだ。
ここでシステマを使うキャラクターは密輸船の船長レーシィの部下であり、レーシィは元KGBとされている。これまで紹介した『ディアスポリス』『TOUGH』はロシアの元軍人(元特殊部隊隊員)がシステマを使う例だったが、こういう素性の人間が使うのはこの例だけである(現実のシステマKGB、FBSや警察の人間によって学ばれている)。


ステマが登場する漫画はこれで紹介し終わった。しかし私が知らないものもあるかもしれない。
ステマが登場する漫画の例がみつかったらまた改めて紹介・解説したい。