Twitterで疑わしいと話題になっていた件。ちゃんと調べていないので、メモだけ書いておく。
- 近年、日本女性の「3歩下がってついていく」という教えが、実は男が女を守るためのものだったという話が流布している。
- SNSの投稿やバイラルメディアがよく広めている。例:http://buzz-media.net/moving/2981/
- 江戸時代の男女の別や家制度の認識を考えるとこの解釈は容易には信用しがたい。
- なお、似た言葉として「三歩下がって師の影を踏まず」という教えがある。三尺、七尺などのこともある。
- これは古い例がみつかる。恐らくこの師弟関係の教えのほうが夫婦の教えの例より先行している。
- よく知られているのは寺子屋の教科書として使われた『童子教』の「弟子去七尺師影不可踏」である。
- この師弟を夫婦に置き換えた文章自体は近現代の例でいくつもある。近代以降に広まったのか。
- あるいは夫婦の教えとした文は、元を辿ると寺子屋の女子向けの教科書、往来物あたりで広まったものだろうか。
- これは結局確認できず。『女大学』にあれば簡単に分かったのだが。
- 『女大学』のような江戸の女子教育の本の内容から考えても、新しい解釈は江戸時代の教えとして考えにくい。
- 仮に新しい解釈が正しいとすると、「師の影」の教えでは師匠が弟子を守るのだろうか。この教えでは元は僧侶の話で襲撃を想定していたとは考えにくい。
- そもそもこの解釈はどこから広まったのか。
- 杉山頴男氏がやや近い解釈を本に書いている。
- 『使ってみたい武士の作法』を参照しよう。
武士の家の夫婦が同伴で外出するとき、夫人は三歩下がって歩かなければいけない。この作法は男尊女卑の象徴とも思われているが、実は違う。
(中略)
突然、夫が何者かに斬りつけられたとする。夫がサッと身をかわすとき、夫人が寄りそっていたら、夫人にぶつかりふたりとも転んでしまう。この三歩は身をかわす間合の距離である。
夫が身をかわしたとき、夫人は手に持った風呂敷包みを目の前の敵に投げつける。夫が反撃する時間をつくるための風呂敷包みである。
-
- 杉山説では夫人も戦いを手伝うのである。これはこれで疑わしいところがある。
- なぜ夫人のいるほうに下がるパターンを想定するのか、とか。夫人が人質に取られないか、とか。風呂敷包みがうまく当てられるのか、とか。下人はいないのか、とか。
- ネットの説同様、男女の別にうるさい武士が夫人同伴する例がどれだけあったか疑問。
- 杉山説・ネットの説のどちらにしろ、裏づけとなる当時の史料はあるのだろうか。
- 仮にあったとしても果たして当時主流の考え方だったかどうか。
- 杉山説を基にネットの説が生まれた可能性が考えられるが、はっきりしない。
- ざっと調べたところではこのくらいしか分からなかったが、今のところ新しい解釈については江戸しぐさ並みに疑っている。
(2015-04-01追記)
・Twitterでのやりとりがまとめられていた。
日本の女性が男の後ろを歩くのは斬られないため!?ホントか? - Togetter