ナイフを使う攻撃者に対処する護身を考える際、ナイフを持たないほうの手を全く考慮しない人がいる。
これは、現実のナイフを使う犯罪で両手を駆使するような複雑な動きはできないという想定によるものだ。
しかしこの想定を否定する専門家は古くからいる。
アメリカのフォルサム州立刑務所での経験を基に現実的なナイフ格闘をまとめたPut'em down, take'em out! knife fighting from Folsom prisonという本がある。
Put 'Em Down, Take 'Em Out: Knife Fighting Techniques from Folsom Prison
- 作者: Don Pentecost
- 出版社/メーカー: Paladin Pr
- 発売日: 1988/12/01
- メディア: ペーパーバック
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経験を積んだ人間は何も持たない手が先に動き、相手をつかんだり殴ったりしてから相手をナイフで突く。
テレビドラマの悪役のようにナイフを持つ手を先に動かすことは現実にはないとしている。
この問題について2016年に調べた人がいる。
イギリスでアーバン・クラヴ・マガを指導しているパトリス・ボナフーは2016年に150以上のナイフを使った犯罪や闘争の映像をチェックした*1。
その結果、71.1%の攻撃者はナイフを持たないほうの手を先に動かしていたという。
攻撃者は相手を殴ったり掴んだりしてからナイフで刺す。特に掴むことがポピュラーだ。
何も持たない手を先に動かしている攻撃者のうち80%はその手で犠牲者を掴んでいたという。
これはナイフに対処する際のリアクションにも影響する話だ。
ナイフに対処する技術を考える際にはナイフをどうするかだけでなくナイフを持たない側の手が動くことを考慮する必要があることを示唆している。