鎖を使う武器と武術


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もう一か月以上前のことだが、上記の記事が公開された。
記事とあわせてTwitterで私の名前が挙がっていて、私も言及したほうが良いと思っていたがなかなか記事に書けなかった。
時間をかけてもうまくまとまるわけではないので、わかる範囲で武器としての鎖について書いておくことにする。

武器としての鎖と武術

まず、前提として鎖を主な構成部品とする武器は世界各地に存在し、それを扱う武術もある。
有名な例としては日本の鉄鎖術・分銅鎖術がある。
鎖の両端に錘をつけた武器で、色々な呼称がある。
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類似した武器として琉球古武術のスルジン(スルチン)がある。
分銅鎖と違って片方は錘、もう片方は鋭い棒状になっている。練習用スルジンは縄製。
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中国の例では流星錘が知られている。
これは縄の場合と鎖の場合があり、武術のデモンストレーションや練習では縄の流星錘ばかり見る。
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この他、鎖単体で他に錘や柄をつけない武術の例もある。
下の動画はシラットのランタイ(インドネシア語で鎖を意味する)の例。
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他にも様々な武術で鎖を使う例がある。

武器としての鎖の長所・短所

武器として鎖を見た場合、縄などと同じようにフレキシブルである点が最大の長所だ。
持ち歩く際に場所をとらず目立たないように隠せる。
攻防においても巻き取ったり隠したりして刀剣や長柄の武器とは違った運用ができる。
また縄と違って強度があるため、相手の武器と接触しても摩耗や切断の心配がほとんどない。
一方、欠点は鎖そのものの殺傷力が低いことだ。
縄よりは硬く重いとは言っても、鎖だけで相手を打ち据えてもなかなか大きな威力になりにくい。
また相手の衣類や防具次第で鎖の攻撃力は激減する。
そのため錘など武器として攻撃力を高める部品を付けたり、巻き付けて相手を絞めるなどの技法を使ったりする。
そしてもう一つの欠点は、動きを制御しにくいということだ。
縄・鎖・鞭などのフレキシブル・ウェポン全般に言える問題で、一般的な武器より扱いにくい。
こうした特性から刀剣や長柄の武器、あるいは棒などと比べると使う状況を選ぶ武器であり、独特の技術を要する武器であると言っていいだろう。
鎖ならではの用法や長所が武器としての製造コストと技術習得コストに見合う意味があるかどうかが問題になる。
既存の武術を見ると、鎖の武器としての意義は鎖の強度と可動性を生かして「錘を叩きつける/相手の武器を防ぐ/相手を拘束する」ものとしての役割が強いと考えられる。