ネット小説のシステマ登場作品507作品を読んで

ロシアの格闘技システマが登場するネット小説を記録して2019年上半期で553件に達した。
これまでも何度か記事にしているが、今年チェック対象サイトを増やして一挙に数が増えている。

過去記事:
2017年8月 システマが登場するネット小説102作品を調べてみた - 火薬と鋼
2017年12月 システマが登場するネット小説158作品を調べてみた - 火薬と鋼
2018年4月 システマが登場するネット小説258作品を読んだ雑感 - 火薬と鋼
2019年3月 システマが登場するネット小説が380作品に達した - 火薬と鋼

しかし今では非公開にされたり削除されたりして読めなくなった作品も多い。
553作品のうち現在でも読めるのは507作品である。
この507作品の集計と作品での扱いについて書いてみる。

ネット小説投稿サイト別の作品数

小説投稿サイト別に簡単に円グラフにしてみた。
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当然投稿作品総数が多い「小説家になろう」が一位である。
次点はpixivである。この事情については先月pixiv小説に登場するシステマが急増した理由とは - 火薬と鋼に書いたとおり『名探偵コナン』の二次創作の影響が強い。pixivでは女性向けの二次創作小説で広まっており、今後しばらくpixivのシステマ登場作品は増えるだろう。
なお、複数のサイトに同一作品を投稿している場合は、最初に投稿したサイトでカウントしている。延べ数で計算するともっと多くの作品数が存在する。

年次作品数

年ごとの作品数をカウントした。
作品のうち初めてシステマが登場した話の公開年だけを記録している。
連載作品で複数年にわたってシステマが登場している回数をカウントしたらもっと数字は大きくなっただろう。
若干の変動はあるがシステマが登場するネット小説は年々増えているとみていい。
2019年は上半期分までの数字であり、2019年終了時にはさらに増えることが予想される。

作品数
2007 2
2008 1
2009 0
2010 3
2011 4
2012 17
2013 32
2014 25
2015 51
2016 79
2017 86
2018 128
2019 79

ネット小説の中のシステマの説明・描写のリアリティ

チェックした作品全てを読んでいるが、ネット小説のシステマの説明・描写のリアリティは様々だ。
うまく現実のシステマを取り入れている小説もあれば全く現実と似ていないものもある。
現実と似ていないシステマが出てくるのは、創作としての面白さの都合というより一般に手に入る情報の限界や先行作品によって誤解が広まっているためと考えられる。
例えば
「ロシア軍兵士全員がシステマの訓練をしている」
「ロシア軍特殊部隊隊員全員がシステマの訓練を受けている」
「日本のシステマの練習者は自衛官や警官、格闘家でごつい人しかいない」
といった趣旨の解説が出てくるネット小説が複数あるが、事実とはだいぶ異なる。
こうした説明はシステマに対する誤解というより軍隊格闘技全般への思い込みや情報の少なさから来ているものだろう。
この他、技術面についても実態と合わない例がある。
「システマは多人数戦闘に特化している格闘技である」
「システマの多人数戦闘は独特の歩法で行われる」
といった説明は、システマを扱った有名作品の説明から来ているが、現実のシステマからずれている典型的な例だ。
ネット小説の人気作品から誤解、間違いが広まるパターンは結構ある。
ネット小説は書籍化・漫画化でより一層広まる。ネット小説の格闘技解説の影響力は潜在的にかなり大きいと思っておいたほうが良いだろう。